「もう本(活字)なんて古いよー。」とか
「今はタブレットとかの方が、分かりやすく教えてくれるよ。」とか
国語の先生でも、「読書なんか嫌いでも大丈夫です。入試国語は論理ですから。」とか
色々なご意見があります。
ただ私の経験から言って、おそらく長年たくさんの生徒さんを見てきた先生方なら同感してくれると思うのですが、
「本が好きな子は、学力が高い子が多い。」
という相関関係が、ある程度存在するのは、
厳然たる、純然たる、絶対的なる事実です。(←言い過ぎでしょうか?)
読書をしなければ成績は上がらないとか、読書さえしていれば大丈夫とかいうのは、確かに教える側の立場からすると問題です。
また読書が好きだからと言って、全員一人残らず成績が良い訳でもありません。
(いくら身体を鍛えても、その競技を練習しなければ、上手くならないのと同じです。)
しかし、何度か(ちなみに昨年もその前年もです)経験したのですが、6年生で急にやってきてグングンと偏差値が上がり、ポーンと難関校に受かってしまう子というのがたまにいらっしゃいます。
そういう奇跡を起こす子には、自主性があるとか、貪欲であるとか、運動をしていたとか、先生を敬愛してくれているとか、不思議といくつか共通点があったりするのですが、その中の一つが「本を読む」、というか「本が好き」です。
やっぱりここは素直に、読書と学力は関係がある、と考えた方がお得だとおもいます。
それに中学受験に限った話ではなく、本がスラスラ読める、活字に強くなるというのは、これから長い一生を生きていく上において、物凄く大きなメリットがあります。
いくら早送りで音声を流してもある程度時間がかかってしまうところ、活字慣れした人間にとっては文字で見れば一瞬で終わりです。
入試だけでなく、社会に出てからも会社でも専門職でも上位層に入るためには(←イヤな言い方ですが…)、今でも必要な力である事に変わりはありません。
ただポイントは、読書をやらされているではなく(それでも全くしてないよりは全然良いでしょうが…)
読書が「好き」という所です。
まずは何でも良いので、好きなものが見つけられたら最高です。
ネットで調べれば、なぜ読書をすると頭が良くなるのか、それこそいくらでも出て来ますが、ここではいくつか、私がたくさんの生徒さんを見てきて、これが原因じゃないかなー、と感じたものについて、いくつか書いてみます。
脳に良い影響をもたらす。
文章を読んで、その内容を頭の中に作り上げるというのは、いわば抽象化を扱う力とも言えます。
「抽象↔︎具体」の変換力とでも言いましょうか…。
物語文では、頭の中で自分で具体的な映像(イメージ)を作って読んでいきますし、説明的文章では、内容のポイントを整理して頭の中に作り上げていきます。
そして、文章というのはブツ切れでなく繋がっていくものなので、前の内容を覚えていないと分からなくなってしまいますし(記憶力)、何もない所に自分の脳内に目に見えないものを作り上げていく作業です(想像力、創造力)。
また、他の事に気が散ってしまっては読めないですし(集中力)、自然と次に来る事を類推していく事になりますし(類推力)、とにかく人間の脳をものすごくフル活動させた作業です。
こういう力というのは、国語はもちろんですが、他の科目にとっても当然強い武器にならないはずがありません。
ネットなどで調べれば、脳の部位始め、科学的根拠においてたくさんの説明をしてくれています。
ただそのような事を知らないでも、読書好きな生徒さんと話していると、何となくそういう能力の高さを感じざるを得ません。
集中力がつく。
前にも出て来ましたが、受験勉強において、私が感じる本好きな子の一番の武器がこれです。
集中力をつける方法としては、読書以外にも、例えばスポーツでも習い事でも、他にもいくつかのものがあるでしょう。
ただ私が、集中力の続かない子に一番オススメしているのが、
「何でも良いので、薄い本(短いお話)を最後まで読み切る。」
というものです。
理由としましては、脳に良いとかももちろんあるのですが、何と言っても、読書をする時と勉強する時の形が近いからです。
極端な話をすれば、好きな本を参考書や問題集に変えれば、勉強です。
(後は鉛筆を持つだけです。)
冗談みたいな話ですが、実際本を読むのに慣れている子は、座って文字の書かれた紙を読むという動作にあまり心理的なハードルがないように感じます。
どうせ集中力をつけるのならば、目的に一番近い形が良いでしょう。
紙の上での操作、思考に慣れてくる。
言うまでもないですが、現在の多くの試験というものは、ほとんどが紙の上での戦いです。
主流は、パソコンを入力したり、口頭でやり取りしたし、物体を扱ったりではありません。
いわば2次元の(?)文字や数字などの活字を媒介として、考え、作業し、表現し、答え、競い合っていきます。
なので、やっぱり紙の上の世界に慣れている人の方が、有利になってきます。
また、読書は受け身な作業のような気もしますが、実は同時に自分の頭の中で色々とやっている能動的な作業でもあるのです。
よく「問題文をしっかり読みなさい!」とか
「何で見落とし、ミスばかりするんでしょう…?」とか
色々ありますが、確かに注意不足もあるかもしれませんが、
紙の上での思考、作業に慣れていない、という事もあり得るかもしれません。
慣れない舞台では良いパフォーマンスは出来ません。
まとめ
出来る事ならば、読書を好きになって欲しいと思います。
「本離れ」とは言いますが、今でも大きな書店に行けば多くの人達で混み合っています。
わざわざお金を出して買う人がいるのだから、読書というのは本来楽しいはずなのです。
ゆくゆくは色んなジャンルの本を読んでいって欲しいのですが、まずは好きなものを探す事です。
間違っても、歴史的名作やら入試に良く出る作家やら・・・から入るのは危険です。
勉強もそうですが、好きになるのが最強です。
そして、これは早ければ早いほど良いです。
(3歳から、とかまでは言いませんが、幼少期の絵本の読み聞かせの効果は、物凄いものがあります。)
たまに低学年の生徒さんを見させて頂く機会もあるのですが、結構もうすでに差が開いています。
あまり小さい時から勉強しろというのではなく、昔から「読み書きそろばん」と言われるように、楽しんでそれらに慣れておくのは、とても良いという意味です。
もちろん本が嫌いでも、国語を諦める必要はありません。それなりに点数アップの方法はあります。
でもそれは最後の手段にしておきましょう。
英語でも、単語や文法、読む技術だけでネイティブみたいにスラスラと読めるようになるでしょうか。
なかなか厳しいと思います。
という訳で、出来れば、
何か好きな本を見つけられたら、そして読書を好きになれたら、最高に良い事がありますよ!
というお話でした。
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