私の所属していた個別指導の塾は、その性質上、誤解を恐れずに言えば、何か切羽詰まった事情を抱えた方々だったりすることが多々ありました。
性質というのは、はっきり言って、料金がかなりお高いということです。
(その分、最後の砦ではないですが、それ相応の先生達が待ち構えている訳ですが・・・。)
そんな中、表題のような方、結構いらっしゃいました。
ものすごく勉強してるのに伸びない、というパターンです。
「毎朝5時に起きて勉強し、いくつかの塾に通い、夜遅くまで勉強し、毎日長時間、一週間の中で休みなく頑張ってるのに、成績は悪い・・・。」
ホントの話です…。
ちょっと極端な例に聞こえるかもしれませんが、実は似たようなケースは結構あります。
これは辛いです。親子共に辛いと思います。話を聞いている私も、非常に辛い気持ちになってきます。思い出しても辛いです…。
まだ、やらないから出来ないは分かります。これはこれで、まだ対策もありますし・・・。
でも、やってるのに出来ないという話になってくると、一見お手上げな感じすらしてしまいます。
こんな時、当事者の方達は一体どういう発想になるでしょうか?
結構多いパターンとしては…
「勉強の上手いやり方が分かっていないんじゃないかな?」「コツみたいなものが、つかめてないのでは…。」
など勉強の方法に原因を求めたり、
「元が悪いのか?」とか、「結局本人にやる気がないんです。」
など本人の資質に原因を求めたり・・・。
お気持ちは分かるのですが、そういった考え方はお勧めしません。
その可能性はあまりないからです。
もしそうだったとしたら、そうだったとしても、さすがにそこまでやっても上がらないのはおかしいからです。
つまり、実は原因は別の所にある事が多いものです。
長時間やっているのに成績が上がらないご家庭の状況
では、そのような場合、いったいどういったご家庭か多いのか。
私の経験上、いくつかの共通点が見られますので、まずはそこを見ていきましょう。
お心当たりがある場合、もし嫌な気分になられたらすみません。
しかし、何事も改善というものをするためには、現状を正確に把握しておかねばなりませんので・・・。
親御さんが、かなり厳しい。
これは何となく想像がつくと思います。
だいたい厳しくしなかったら、勉強の苦手な子にそこまで徹底的に勉強をさせる事など不可能ですから…。
もちろん憎くてやっていらっしゃる訳ではありません。むしろ逆です。
愛するがゆえに、期待するがゆえに…です。
だからこそ悲劇なのです。
親としてのの責任感のようなものから、そのようになってしまっている場合もあるようです。(このパターンはどちらかと言うと、お母様の方に多く見られるような気がします。)
勉強面に介入して、実際に教えてらっしゃる場合もあります。
(特に国語などに多いですが、実はこれは気をつけないと、学力、親子関係、夫婦関係(?)などなど…、多くの面をこじらせてしまう事が多いのですが・・・。)
とにかく色々と原因はありますが、共通点する点としては、
「厳しく管理する事によって、勉強量の力で何とかしようとしている」
という事です。
生徒さん達はどういう感じの子が多いか?
では親御さんでなく、生徒さんの方はどうでしょう?
おとなしめな子、自由な感じの子、よくしゃべる、逆に人見知りする…などなど、一見すると共通点はなさそうな気もします。
しかし、よーく見ますと、ある一つの共通点を見出せます。
それは…
みな「良い子」だという事です。
もし当事者の方だったら、思わず一言言いたくなるかもしれません。
「はぁ、何を言ってるのですか⁉そんなんじゃないんです。だから苦労してビシビシやってるんですよ!」と…。
これは、もしかしたら私の言う「良い子」と親御さんの言う「良い子」のニュアンスが違うのかもしれませんね。
私の言う「良い子」というのは、言われた事を素直に聞く、とかいう意味ではなく
自分の気持ちより親御さんの気持ちの方を優先する優しい子、という意味です。
????????・・・・かもしれませんが、もう少しだけお聞きください。(笑)
特に昔に多かったですが、いわゆる厳しい先生のクラスの時にはシーンとしている生徒達が、優しい(過ぎる?)先生の時には急に態度が豹変して、学級崩壊のようになってしまうという出来事がありました。
表面的に言わば「力」によって押さえつけられると、逆にそうでない時にひどい事になるという事で、今ではそれは良くない指導とされています。
それと似ていて、厳しい親御さんに長時間管理された生徒さんを、新しく授業をさせて頂く時、初めは緊張しているのですが、慣れてくるとだんだんと「裏の(本当の)顔」を見せ始めてくれます…(笑)
その顔がその生徒さんが一人で勉強している時の、一人で試験を受けている時の顔なのです。
(もちろん「顔」というのは、顔の作りや表情の事でなく、勉強に対する姿勢、やる気など、全てを含んだ意味です。)
そこを変えないでおいて、成績が上がる事はありません。
でもそういう子でも、というかそういう子に限って、心の中は
「良い成績になって、親を喜ばせたい、先生を喜ばせたい…。」
という気持ちは持ってくれています。
むしろ、負けたくない、すごいと言われたい、ゲーム感覚で高得点を取りたい…などがモチベーションになっている子達よりも、そういう気持ちは強かったりする気がします。
人の気持ちの方を優先する優しいタイプの子とも言えます。
だからこそ悲劇なのです。(←しつこいかもしれませんが…。)
なぜ長時間の勉強が成績につながらないのか?(どんな状態になってしまっているのか?)
では、なぜ長時間頑張っているのに、成績に反映しないのか?
それはいわゆる長時間勉強によって、いったいどんな状態になってしまっているか、を考えると分かりやすいかもしれません。そこにヒントがあります。
自主性が弱くなる。
まずこれが挙げられます。
長時間勉強しているのに成果に結びつかないような生徒さんの場合、あまり自分で計画して長い時間やっている事はありません。
たいていの場合、強制的に、言われた事をやらされている場合がほとんどです。
そうすると、まず自主性が弱くなってしまいます。完全なる受け身とでも言いましょうか・・・。
勉強内容、時間の使い方などに関してはもちろんの事ですが、実は話はそこだけに終わりません。
要は、頭の使い方、問題の解き方まで、そうなってしまうのです。
こういう生徒さんを見ていると、だいたい二つのパターンに分かれます。
一つは勉強してるフリをしている、言わば不真面目なパターンです。
これは親御さんが知ったら、ショックを受けられるかもしれませんね。
でも、全く勉強していない訳ではないのです。
ただ本来もっと短時間で出来るものを、ものすごくゆっくりやっている感じです。数分で出来るものを何時間もかけていたりする事もあります。
または、見た目は勉強している風なのですが、実は頭を使っていない、なんていう事もあります。
要は「省エネ」というか、少しでも疲れないように時間の過ぎるのを待っています。
でも生徒さんの立場に立ったら、気持ちは分からなくもありません。
何のためにやっているのか良く分かっていない状態で、それが終わったら次から次へとやることが際限なく差し出されてきたら・・・。
そうなってしまいますよね。一種の人としての防衛本能みたいなものと言えるかもしれません。
そして、もう一つは真面目に勉強しているパターンです。
え⁈真面目に長い時間やっているのになぜ??
とお思いになるかもしれません。
でも、こう言ったらイメージ出来ないでしょうか?
間違えた漢字をひたすら何個も書き続けたり、解ける問題を繰り返しやってみたり、問題を解きっぱなしで正解を見てチェックするまでしなかったり…。
何となく出来るようにならないのも、分かるのではないでしょうか?
実はこの二つのパターンには共通点があります。
そうです。それが冒頭に挙げた・・・
「自主性がない」、「受け身である」という事です。
そしてその結果、「自分の頭で考えない」という所につながっていってしまいます。
勉強の密度が薄い。(効率が悪い。)
1からの当然の結果ですが、ものすごく密度の薄い(効率の悪い)勉強になってしまっています。
本来数分で終わるものを何時間もかけているので、残酷な事を言ってしまえば、実質ほとんどやってないのとあまり変わらなかったりします。
「いや、たくさん問題解かせてますよ!」「キチンと宿題だけは、いやそれどころか、さらにプラスアルファでやらせてます!」などなどのお声が聞こえてきそうです…。
では、なぜ出来るようにならないのでしょうか??
それは、やらなくても良いものをやっているか、やっているものが頭に入っていないか、ではないでしょうか。
お薬でも、必要なものを飲むから健康になるのであって、関係ないものを飲んでも良くなりません。
というか逆効果です。
また身体に吸収されなければ、意味がありませんよね。
では、どうしたら良いのか?
何となく見えてこないでしょうか?
そうです。ポイントは「自主性」です!
良い意味で、ある程度「自立」してもらわなくてはなりません。
「あぁ、ウチの子には無理だわ。子供っぽいんで・・。」なんて諦めないでください。
子供っぽい子でも成功した子は何人もいます。
むしろ中学受験を通して成長する良いキッカケになります。
中学受験については色々な意見がありますが、この精神的な成長こそは、素晴らしい、経験した子しか得られないものです。
その後の人生に大きくプラスになるものです。
勉強を好きになってもらう。または、受験したい気持ちにさせる。
まずはコレです。
「勉強(その科目)を好きになる。」のが、結局最強です。
好きならば、ほっといても勉強します。むしろ、やめろと言っても、やりたがります。
以前、あまりに夜遅くまで勉強してるので、親御さんが身体に悪いとやめさせようとしたところ、本人が泣いて「頼むからやらせて欲しい!」と訴えた、なんていう事件(?)もありました。
ホントの話です。確かにご相談の電話が来ましたので、実話です。
好きならば、自然とどうしたら点数が上がるのか考えるようになります。
自分で考え、当事者意識が出てきます。意味のない事はやらなく、やりたくなくなります。
また、「好きになる」までいかなくても、本気で何とか受験したい(受かりたい)から、自分で考えるようになる事もあります。
別に勉強自体が好きでもないけど、欲しい結果を得るために、自分で考えて必要な事をやるようになります。
しかし、これらの事は根本的に良くなるポイントなので、目指したい所ではありますが、一言で解決出来るほど簡単な問題ではありません。
確かにやり方はありますが、話し出すとそれだけでかなりの量になってしまいますので、ここではやめておきます。
そもそも今回のお話のモデルケースからそこへもっていくのは、不可能ではないですが、少し時間がかかってしまいます。
まずは他の所から入っていった方がやり易いです。
一緒に計画を立てる。(やる事を決める。)
そこでまず最初にやりたいのが、こちらです。
やる事を一方的に押し付けるのではなく、話し合いで決めていきます。そして、その代わりに、決めた事は絶対に守ると約束してもらいます。
でも、意見を聞く形をとって、中身が結局押し付けや脅し(?)になってしまっては、意味がありません。
そこはだけ絶対に気をつけねばなりません。なりがちですので…(笑)
本人の意見、本音を聞くのが大切です。
家庭教師など第三者を入れても良いので、「いついつまでに〇〇が出来るようにならないと△△だけど、どうしたら良いかな?」と考えさせてみましょう。
随分とぬるい方法に思われるかもしれません。
しかし、「自分で頭を使わずにとにかく時間が過ぎるのを待つ勉強(←もはや作業、労働です)」が身に染みてついてしまっているのであれば、そこを変えなくては、解決になりません。
ご本人がかなりの怠け者の場合(基本的にはそれが普通ですが・・・)、とんでもない事を言ってきたりするかもしれません。
その時は、そうだと○○後にこんな感じになってるよ、という事で話し合いましょう。
ポイントは、あまり欲張らずに、今よりも少しだけ成績を上げるには…という視点で考えて欲しいという事です。
少しだけ?と考えてはなりません。いつまでも変わらないよりは、全然良いのではないでしょうか?
ましてや、一度「自主性」がついた生徒さんは勝手に成長し続けていきますので、親御さんは楽ですし、本人は幸せですし、これが一番です。
こんなセリフ、聞いたことないでしょうか?
「ウチはあんまり勉強しろしろ言った記憶がないんですよね。勝手に自分でやってるんで…。」
実は物凄く成績の良い生徒では、結構聞くお話です。
やっぱりポイントは「自主性」であり、本人の気持ちです。
身体は無理矢理に動かせても、心(頭)までは動かせません。
たとえ相手が子供でも、です。
でも、上手に誘導する事は出来ます。
その方法を考えた方が、結局は近道です。
最終的には、自主性や本人の自覚の強さ、高低がそのまま成績や合否につながってくる事になります。
是非とも、その事を覚えておいて欲しいなと、思います。
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