「先生、うちの子は社会は結構頭に入っていて、私が聞くときちんと答えられるのに、どうしてテストになると出来ないのでしょうか?」
「そのままストレートに聞いてくれれば答えられるのですが、ひねった問題、応用問題になると点数が取れません。」
「意地の悪い聞き方、ひっかけ問題にいつもひっかかって、ミスしてしまいます。」
・・・などなど。
同じような悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか?
全く勉強しない生徒さんには又、別のやり方がありますが、ここでは「せっかく頑張って覚えているのに、テストの結果(点数)に結びつかない」パターンについて考えてみます。
例えば上の三つのパターンですが、実は原因の根は同じ所にあると思われます。
それは社会において求められている「本当の力(見えない力)」がまだない、という事なのです。
これはガムシャラにとにかく暗記しまくれば何とかなる、というものでもありません。(絶対に身につかないとまでは言いませんが、相当効率が悪いです…。)
①社会における本当の力(見えない力)とは何か?
これは一言で言ってしまえば、
「本当に大事な要のところを、完璧に身につけているか」という事です。
もう少し具体的に別の言い方をすれば、
「その分野、単元の一番骨組みとなる重要なポイント(基本となる部分)を、何も見ずに白紙に書き出し、説明する事が出来るか」とも言えます。
一問一答のように、ある事を聞かれて答えられるような力とは、ちょっと別の力になります。
球を打ち返すというより、自分で球を投げられる、そう、アウトプットの力に近い感じです。
例えば…
「君津市で盛んな工業は?」に答える事が出来るのではなく、「日本の製鉄所の場所を北から順に全て言えるか?」
「南北朝を統一したのは誰ですか?」に答えられるかではなく、「足利義満のやった事を5つ言えるか?」
「人間らしく生きるための権利は何ですか?」に答えられるかではなく、「基本的人権を全て説明してください」に対して、大きく分けると〇〇と○○で、それぞれが△△に分かれ…と自分で説明出来るか…。
こんな感じです。
ただ細かく言うと、地理、歴史、公民それぞれで、求められるものは違うものになります。
②どうしたらその力をつける事が出来るか?
例えば「歴史」を例にとって考えてみます。
歴史分野においての、本当の力(見えない力)とは、いったい何でしょうか?
それは・・・
「流れが分かっているか?(自分で説明出来るか?)」
です。
この力を身につけるには、何も見ないで自分で年表が書けるようにする、という方法があります。
何年に誰が何をして、何が起こって、その結果どうなって…、という歴史の骨組みの部分をキチンと説明出来るようにします。
ポイントは「絶対に外せない重要な事のみ」という事です。
焦らずに、この骨組みの部分が出来てから、その周辺に細かい知識を入れていく事が大事です。
この基本的な骨組みが出来ていないのに、やたら細かい事をたくさん覚えようとしても、覚えれば覚えるほど、むしろ逆効果にすらなりかねません。
例えるならば、まだ引き出しの中に仕切りが出来ていないのに、物をドンドン放り込んでいるような状態とでも言いましょうか。
どこに何があるか分からないので、必要な物が取り出せない状態です。どうでも良い物のせいで大事な物(基本的で、よく出題されるものなど)が、取り出せなくなってしまいます。
このような生徒さんの特徴として、軽重がぐちゃぐちゃになっていて、変な細かい事は知ってるのに基本的な事が出てこなかったり・・・、などがあります。
また時代感覚が抜けていて、何時代の出来事かを間違えたり、並べ替え問題が苦手だったりします。
とにかくガムシャラに暗記、暗記のみで頑張ってきた人に、たまに見受けられる現象です。
実はこの本当の力(=見えない力)は、難関校になればなるほど、応用問題になればなるほど、試されてきます。
つまり単純な機械的な勉強しかしていない生徒さんが解けないように、よく考えて作られているのです。
一見遠回りに見えますが、一番の近道ですし、そんなに大変な事でもないので、是非ともこの本当の力(見えない力)を身につける事を意識してもらいたいと思います。
もちろん一番簡単なのは、大切な骨組みの部分が分かっている人に教わる事ではありますが…。
③難しい問題、細かい知識を問う問題の正体
「そんな事言っても、実際に難しいのがたくさん出るんですけど。」
「でも基本知識で解けそうには見えないんですけど。」
などなど・・・、そんなご意見も出てきそうです。
確かに、実際の問題を見てみると、とある塾や中学などでは、どう見ても基本だけでは太刀打ち出来なさそうな印象を受ける問題があります。
これには大きく分けて、二通りのパターンがあります。
一つ目は、塾の模試やある大学付属校などに見られるパターンです。本当に細かい知識(変な問題?)が出たりします。
しかし、これは数からしたら本当に少ないですし、これが取れなかったら落ちるというものでもありません。
申し訳ないのですが、問題を作る先生に問題があるとも言えるものです。(←ゴメンナサイ!)
御三家を始めとした本物の良質な入試問題にはないものです。
ただ、もしそういう学校を受ける場合は、一応目は通した方が良いでしょう。でも完璧に覚えるまでいかなくても、聞かれて何となく分かる・・・のレベルでも大丈夫です。
二つ目は、こちらがほとんどなのですが、一見細かく難しい知識を求めているかに見えて、実は本当の力(見えない力)を試しているパターンです。
サピックスの難問(良問)や難関校の実際の入試問題(形だけ真似て作った問題でなく!)はこちらです。
私達が見ても、素晴らしい!と感心させられる事も多いです。
さすがこの学校だなぁ・・・、と思わされます。
では、問題を作った先生は、いったいどのように解かせたいのでしょうか?
1.連想させる問題
本当に基本が完璧に身について、自由自在に使いこなせるレベルにまで入っていれば、自然と連想出来るように作られています。
連想、ひらめきなどは生まれつき、頭の良さによる、などとおっしゃる方もいて、完全に否定はしませんが、「もしその内容が常識になる位にまで頭に入っていれば、思いつくでしょう・・・」と思われるものがほとんどです。
こういう問題が解けない原因を知識の量や、ひらめきなどに求めて何とかしようとしても、残念ながら報われません。
そもそも方向性がちがっているので・・・。
一見、連想力を試しているようでありながら、本当の力を試しています。
2.考えさせる問題
思考力を問う問題です。
ただこれも思考力、思考力・・・と同じような問題をたくさん解いたからといって、必ずしも解けるようになる訳ではありません。
人間が頭の中で思考するためには、思考するための材料、道具が必要です。
この道具を上手に使って(=思考して)、戦っていく(=問題を解く)訳ですが、この道具が弱かったり、どれを使うか分からなかったり、きちんと自由に扱えなかったらどうでしょうか?
そうです。戦い(思考)に集中、出来ませんし、そもそも戦い(思考)になっていない可能性すらあります。
逆に完璧な道具を自由自在に使えれば、思考のみに集中出来ます。
使える道具、使うことが求められている道具というのは、決して細かい知識ではありません。
3.ご家庭の様子など、その子の環境を探る問題
これに関してばかりは仕方ないとも言えますが、これは合否に関係するほど出題される訳ではありません。
一応可能であれば、受ける学校の入試問題を見てみて、求められている感じの会話をお家の中でする、展示会に出かけてみる・・・etc、など色々してみるのは、良い事だとは思います。
ただ、こういう問題も知識量で何とかしようとしても、膨大な時間を使って報われないパターンになりがちなので、気をつけましょう!
ちなみに開成の「東京問題」などもこれです。(関西からのお試し、実績稼ぎが嫌で出しているだけです。)
もちろん、やらないよりやった方が良いですが、その程度です。
これが取れたら受かる訳でもないですし、ほどほどにしておかないと痛い目に合います。
確かにその学校特有の問題対策と言えば、塾の売りにはなるのですが・・・。
以上、色々見てきましたが、是非とも問題の表面だけを見て、知識の量で何とかしよう、という勉強はやめにして、社会の本当の力(見えない力)をつけていきましょう!
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