「物語文」読解の「第一歩」

中学入試において「物語文」の読解は絶対に外せません。物語文しか出ない学校すらあります。

そして、生徒さんのタイプによって、もちろん国語全般が苦手という方もいらっしゃるのですが、特に「物語文」が苦手…というパターンも結構存在します。

世間にはたくさんの塾や問題集などがあって、様々な事が言われていますので、迷われている方も、多くいらっしゃるかもしれません。

そこで今回は、色々やる前にまずこれだけは!

という物語文で良い点を取っていくための、「物語文」読解の「第一歩」について書いてみたいと思います。

目次

その前にまずは0.5歩

何事も順番が大切です。

なので、「第一歩」の前に、さらにその前提となるいわば「0.5歩」ともいうべきものについて話さなくてはなりません。

書いてある言葉、文章が分かる事。

これは言うなれば、日本語としてキチンと分かっていますか、という事です。

「え?そんな失礼な!」なんておっしゃられるかもしれませんが、実はとても大切なポイントなのです。

まず文章ですが、主語・述語・修飾語が正確につかめて、これは同じ事を言い変えているだとか、そういう事が分かるという事です。

特に説明的文章などでは、これが出来るようになるだけでグンと成績が上がる人もたくさんいます。

書店に行くとほとんどそっち系に力を割いている問題集もたくさんあります。

そして物語文でも、意外とその辺が影響してたりする事もあったりします。

あとは言葉(語彙)ですが、こちらはなかなかすぐに解決する事は難しいかもしれません。

ただたくさん文章を読んだりするうちに、知らない言葉が出てきたら、流してしまわないで一つ一つ身につけていく姿勢が大切です。

物語の背景が分かる事。

「今回の問題は読みにくかった、解きにくかった、相性が合わなかった…」とか言う場合に結構あるのがこのパターンです。

昔の時代背景、自分とは全く異なる家庭環境、人間関係、年齢の離れた登場人物、馴染みのないスポーツが出てきたり…などなど、これが分からないと、読みづらかったり解きづらかったりしてしまいます。

ただこれも先程の語彙の問題と似ていて、出てきたものを一つ一つ疑似体験として、頭に入れていきましょう。

0.5歩とは言いましたが、この語彙や背景をたくさん知っていくというのは、ある意味終わりがありません。

これも読解力の前提として存在するもので、勉強しながら意識して身につけていくものとして覚えておきましょう。

ただ問題が解けなかった時に、単なる読解力の問題とは違う所に原因がある事もある、という事は知っておいた方が良いです。

文章を頭の中で「映像化」出来る事(イメージ力)が第一歩

世の中にはとても多くの参考書類、塾のテキストがありますが、物語文の分野に関して言えば、目次に出てくる順番はほぼ決まっています。

たいていまずは「場面」みたいなのが、最初に来る事が多いです。

いったいこれは何を意味しているのでしょうか?

実はこれは物語文の読解を習得していく順番になっています。

つまりきちんと「場面」がつかめていないのに、「心情変化」も「人物像」も「主題」も本当の意味で分からないという事です。

また逆に「場面」がキチンとつかめていれば、「心情」を始めとして、だいたいのところは自然と分かってしまいます。

「ウチの子は人の気持ち(心情)が分からないんで、物語文は出来ません…」などと言う人がたまにいるのですが、そういうお子さんでもアニメやドラマなどで出てくる人の気持ちは分かったりします。

それはなぜかといえば、すでに「映像化」された状態が脳に送られてきて、その「場面」が良く分かるからです。

別に「物語文が苦手な子は人の気持ちが分からない子」という訳ではありません。

なので、まずはそのお話の場面をキチンと映像化出来る力が根本なのですが、それが身につく前に、授業も本も次に進んでしまう事が多いのです。

そのため新しい事を重ねていっても、あまり効果が出なかったりします。

その後も、教える側としてはその生徒さんが頭の中で映像が描けているかチェックしなくてはなりませんし、生徒さんの方もそこは常に注意して、単に文字面だけを読む事のないようにしないとなりません。

第一、そうでないと読んでいても面白くないはずです。

本来小説(物語文)というのは、芸術や娯楽としてあるもので、面白いはずなのです。

では、場面を映像化出来る力(イメージ力)とは言いますが、具体的にはどういう力なのでしょうか。

5W1H(あらすじ)が分かっているか?

5W1Wとは、いわゆる「いつ(when)、どこで(where)、誰が(who)、何をしたか(what)、なぜ(why)、どのように(how)」の事です。

あらすじとも言えますが、漠然としたものではなく、もっと正確に分かっている事が大切です。

特に「いつ(時間)」、「どこで(場所)」は場面分けでも重要です。

また「誰が(登場人物)」は何人出て来てもキチンと整理されてないとなりません。同じ人が別の呼び名で呼ばれていたりする事もあります。

要はこれらが頭の中で映像化されている事が大切です。

映画を観るように背景や人物の容姿、表情や置かれた状況まで自然と浮かんでくれば理想的です。

例えば回想場面が出てきて時間軸が前後したり、たくさんの人物が出てきて動きが複雑だったり、などなど分かりづらい時には、よく問題になったりもします。

また登場人物の中の誰かの視点で描かれていたりする場合、そこを問われたりもします。

全てはキチンと映像化出来ていれば答えられますので、そこを試して聞いてきているとも言えるのです。

五感で感じられているか?

映像化というと視覚のみ思いがちですが、他の感覚でとらえられている事も大事です。

例えば、その場面は静かか騒がしいか、どの位の声の大きさで話しているか、などの聴覚や、場合によっては、海の匂いがするかの匂いなど、他の感覚も正解を答えるのに必要な事があります。

情景描写などで、嵐の日に荒々しい雨音や風の音が感じられるか、爽やかな朝に太陽の光を全身に浴びて暖かさを感じているか、などが心情変化やテーマの問題に直結してきたりする事もあります。

一言で言うと、どこまでリアルに体感出来ているかという事です。

全てはイメージの世界のお話なので、どこまで読んだ人が、まるで映画を観るように、さらには自分で体験しているように感じられるか、全ては自分の頭の中で作り上げる想像力、そしてある意味では、創造力の問題です。

単に「場面をつかむ力」と言っても、本当はここまで奥が深くて、大切なものであると、分かって欲しいのです。

どうしたらこの力を鍛えられるか?

これほど重要なイメージ力ですが、どうしたら良いかと言うと、まずは毎回しっかりとそれを意識して読む事です。

たいてい「場面」は回数にして、初めの1、2回位で終わってしまいますが、その後の単元に進んでいっても、常にそこが分かっているかをチェックしていくようにするだけで全然違います。

そして出来ればやっぱり「読書」が一番役に立ちます。

どんな本でも良いです。いわゆる名作だとか受験に良く出るとかでなくても大丈夫です。

まずは自分の脳が、「文章→イメージ」を出来る力をつけるためなので、何でも良いのです。

一つだけ大切なのは、自分で興味を持てるもの、楽しいものにして欲しいという事です。

話すと長くなるのでここでは止めておきますが、脳の性質を考えると、そこだけはとても重要です。
無理矢理では、あまり効果は上がりません。

ちなみに映画、アニメなどが役に立つ側面もあります。

特に初見の話などは、場面を早めにつかむ力をつけるのに役に立ちます。

ただやっぱり、文字から自分の脳内にイメージを作り上げる作業に比べると楽なので、あまりそれに慣れすぎて活字がイヤになってしまっては困るのですが…。

あとは例えば「今日学校で何があった?」など日頃の会話などでも、イメージが浮かぶような臨場感が感じられるような話を心がけるというのも、とても良い事です。

作文でもそうですが、そこでもやはり5W1Hや五感の表現が入ると相手に伝わりやすく、分かりやすい文章になります。

今回は、「物語文」読解の「第一歩」という事で、イメージ力のお話をしました。

是非ともこの一番土台となる力をつけていって頂ければと思います。



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