「うちの子は勉強しないんで困っています。」
「もっとやれば、もうちょっと成績が上がるはずなんですが・・・。」
「私がうるさく言うんで、いつもケンカになってしまって大変です。」
などなどなど・・・。
私が長年、指導していて一番多いご意見(嘆き?)です。ほとんどのご家庭で抱える悩みと言っても過言ではないかもしれません。
しかし、慣れてしまうと
「子供ってみんなこんな風なのかな?」
「これは仕方ないことなんだ…。」
なんて思われるかもしれません。
しかし、中にはそうでない方もいらっしゃるのも事実です。
そしてそれらの方々の共通点は大抵の場合…
「よく出来る」
そして大抵の場合…
「勉強が好きである」
という事です。
最高ではないですか?(笑)
親の方も口うるさく言う必要もなく、子供の方も楽しくやって褒められる…。
こんなお話をすると
「それは生まれつき、性格によるんじゃないでしょうか?」
「そんな事言ったって現実問題として目の前でやらない姿を見せつけてられて、言うしかないじゃないですか!」
「親の私達が悪いのね…」
などなど、悲しいお声、お怒りの声などが聞こえてきそうです…。
しかし!
断じて、断じて、そんな事はありません!
生まれつきでも、親が悪い訳でもありません。
でも、どこかに「やる気スイッチ」なるものがあって、プチっと押したら全て解決!なんて事もあり得ません。
では、いったいどうしたら良いのでしょうか?
やり方はあります。
しかし、これをやれば日本中(世界中?)の子供達が勉強したくなる唯一の絶対的な方法がある訳でもありません。
指導する先生達も、色々と研究したり、実際にたくさんの生徒さん達と触れ合い、失敗と成功を重ねて、言葉は悪いですが、何百人、何千人の生徒さんをある意味実験?させて頂きながら、分かってくる事も多々あります。
しかし、普通の親御さんはそんな事出来ませんし、たとえ二人目、三人目だったとしても、性格、タイプの違う事がありますよね。
「やる気」を出す方法については、とても一言で片付けられるような問題ではありません。
そこで、今回はその中の一つ、「自信をつける」という方法についてお話させて頂ければと思います。
①「自信」とは?
「自信」と一言で言いますが、そもそも自信とはなんでしょうか?
もちろん文字を見れば、自分を信じると書いてありますが…。
「自信」とは、別の言葉で言えば、「その人の中に出来上がったその人自身のイメージ」(セルフイメージ)の事です。
なので、「自信がある・ない」とかそういう問題ではなくて、無意識の中で「自分はこういう人間である」と決めてしまっているという事です。
嘘みたいですが本当の話です。
例えばこんな経験をしている人も、いるかもしれません。(私は何度も繰り返し体験しています。)
「自分は偏差値45くらいの人間」というイメージの人がいたとしましょう。国語の偏差値30台後半くらいで、国語さえ上がれば平均で50を超えるのに…というパターンです。
今回は国語をものすごく頑張って、さらに読んだ事のある文章であり、さらにカンで解いた問題も当たり、漢字なども準備していたものが的中し、偏差値55だったとしましょう。
すると何と、例えば得意の算数で変な間違いをしたり、または他の科目でとんでもないミスをしてしまい、結果としてやはり4科の偏差値はそんなに変わらない・・・、といった現象が起きたりします。
またはものすごく良く出来たテストの回があったりすると、次の回ではバランスを取るために、ものすごくいつも以上に悪い点数だったりします。
ちなみに、宝クジが当たった人が無一文になったりする、なんていう現象も実は同じ原因らしいのですが・・・。
人間は無意識のうちにセルフイメージに合う行動をとってしまうのです。イメージの中の自分を何が何でも死守しようとします。
なので、「〇〇出来ない、しない」というよりも、自然と「イメージに合った自分になるような」、というか「維持するような行動」をとってしまうのです。
逆に良いセルフイメージがつくとしめたものです。それをキープするように、何の苦労もなく、自然と勉強してしまいます。
というか、むしろ止めようとしても、その位置にふさわしいくらいの勉強?がしたくなってしまいます。
②どうしたら「自信」(セルフイメージ)を変えられるか?
この敵にしたらとんでもなく恐ろしいく、味方にしたらとても頼りになるセルフイメージですが、いったいどうしたら変える事が出来るでしょうか?
これは実に奥の深い問題で、とても一言で済ませるのは難しいのですが、いくつかご紹介したいと思います。
1.いきなり大きく変えようとしない。
こんな経験はないでしょうか?
「よし、今まで全く国語の知識系の勉強をやってこなかったんで、毎日30分漢字練習とことわざ、四字熟語をやるぞー!」
よく見かける光景です。
さて、いったいこの人はどうなる可能性が高いでしょうか?
残念ながら、結論を言ってしまえば、実現はかなり厳しいと予想出来ます。
理由は・・・
「欲張りすぎ」だからです。
今まで全くそれを避けていた、あるいはやれていなかった人が、遅れを取り戻そうと、いきなり極端な事をやろうとすると必ず続けられない原因が出てきたりします。
人は急激に変わる事を潜在的に恐れています。いわゆる潜在意識(=セルフイメージを作っている正体)と呼ばれるものですが、この力をなめてはいけません。
大昔、人間が生き延びるために生きてきた防衛本能なのですが、潜在意識は現状を変えさせないように、必死に抵抗してきます。
この場合でしたら、まずは毎日5分で充分です。それが2、3週間続いて、習慣になってきたら少しずつ10分、15分と延ばしていきましょう。
「たった5分じゃ効果ないじゃないか」というお気持ちは分かります。
しかし、その位がちょうど良いのです。一見効果がないのではないか?何も変わらないのではないか?という位の方が…。
しかし、初めは小さなものでも「習慣」がつくというのは、物凄い事です。一度それがついてしまえば、後は歯を磨くのと同じで、当たり前に何の苦労もなく出来るようになりますので・・・。
何か新しい習慣を身につけたい場合は、とても小さな事から、慎重に始めていきましょう。
同じく成績でも、志望校設定でも、最終的な目標は別にあっても良いのですが、まずは現状から少し上を目指すのが、「やる気」につながります。
2.それが当たり前の環境に身を置く。
環境が変わると、考え方や行動が急激に変わる事があります。特に小学生なんかの場合は、非常に影響を受けやすかったりします。
その集団が「当たり前」の事として行なっている事を、良いものでも悪いものでも受け入れてしまいがちです。
これは意識しないところに、つまり潜在意識に影響を与えてくるからです。
ちなみにこれが進学校、私立の中学校に行く一番の意味だと思っています。環境を手に入れるために行く、という事です。
私は色々な塾の生徒さんを見させて頂く機会があるのですが、同じ量の宿題を出しているのに、反応が全く違ったりします。成績によるというよりも、どこの塾かということの方が影響は大きいみたいです。
自分のいる、もしくはいた環境の「当たり前」を基準にして、楽だ、大変だと思ってしまいます。
環境次第で、その人の大変の基準が簡単に変わってしまうのです。
なので、環境というものには、全力で注意を注ぐべきなのです。
もちろん塾のクラスアップをするとか、良い学校に入るとか、そういう大きな事が出来れば良いのですが、そこまでいかなくても、小さな事から始められます。
オススメは勉強する部屋の環境を変えてみる事です。
可能であれば視界から、勉強から興味を引っ張るものを消してしまえれば理想的です。勉強するのが「当たり前」の部屋作りです。
他にも例えば、家の中で家族みんなで本を読んでいるのが当たり前の環境、ニュースを見て社会について話し合うのが当たり前の環境…etc。
是非とも「それをやるのが当たり前の環境」作り、というのを意識して頂ければと思います。
3.言葉の力を活用する。
これは言うなれば一種の「暗示」みたいなものですが、物凄く強力です。
「暗示」については、何となくご存じかと思いますが、本人に心からそうであると思わせる事です。
イメージとしては、催眠術なんかでよく見かける「あなたは眠くな~る」とか、「今からこのワサビは砂糖になり、とっても甘くなりま~す」とかみたいな感じです。
ポイントは「本人が自発的にそう思うように仕向ける」という所です。
つまり無理やりにお父様、お母さま、先生が、「お前は勉強が好きなんだ!」とどんなに大声で、何度唱えようと、残念ながら、そんなに上手くいくとは限りません・・・。(笑)
では、いったいどうしたら良いでしょうか?
「暗示」とは暗に示す、と書きますね。
そうです。暗に示す、「はっきり言わない」、「それが事実であるという前提で話す」…、という事です。(気づかれないようにです。)
ニュアンスが伝わりづらいかもしれないのですが、そうである人間(勉強が好き、平均以上取れる、集中力がある…etc)だったとして話す、という感じです。
例えば、私の使う技の一つに「相手に聞こえるような声で独り言を言う」があります。
「えー、コレが出来るとは思わなかった。驚いたなぁ。相当凄いな…。頭良すぎるな…。」とか…。
ちなみにご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、教育心理学の世界に「ピグマリオン効果」というものがあります。
これは、教育者の「期待」によって学習者の成績が向上するというものです。すでにビジネスの世界にも取り入れられています。
まさにこの通りなのですが、これに反した行動、気持ちをとってしまう親御様、先生がいるのは残念です。
そうです、先生も、なのです・・・。
お気持ちは分かります。現実を目の前にするとそうなりがちなのは…。
でもそれは今のお話です。未来は変えられます。
私も日々戦っています。
先程も戦ってきました…。(笑)
まず生徒さん自身が、自分はこの程度だと思ってしまっていますので、その影響を受けてしまうのです。
しかし、負けてはいけません。どこまでもその子の可能性を信じて、強烈なイメージ作りが必要です。
私はこれが出来る力こそが、受験に限らず全ての世界において、指導する立場の人間の一番大切な資質だ、とすら思っています。
本当にこちら側の気持ち次第で、相手は変わるのです。
是非とも、その子の可能性を心の底から信じてイメージを作り、それ前提の「言葉かけ」をしましょう。
③絶対にやってはいけない事。
という訳で、「やる気」を出すには、「自信」をつける事、つまり「自分は〇〇出来る(ふつうにしている)」というセルフイメージを持つ事です。
しかし、まずはそれに反する事をしてしまっている場合は、それを止めるだけでも相当な効果があります。
実は結構やってしまってる事が多いものです。あえて「自信」をなくしてしまうような対応を・・・。
まずはどれだけ物凄くもったいない事をしているのかに気づいて欲しいのです。
そういう状態でいくら頑張ってみても、言うなればブレーキをかけながらアクセルを踏んでるようなものです。
いくら形だけ勉強時間、勉強量を増やしてみても、それに比例して結果は伴ってこないです。
というか、逆効果になりかねません!
こんなに頑張ってるのにダメなんだ→自分はダメなんだ→さらに自信がなくなる(セルフイメージが低くなる)→やる気がなくなる・・・
出来ればこの逆のパターンを取りたいのです。
例えば某塾でのお話です・・・。
あえて何が出題されるか分かっている先生が、生徒がそれを解ける状態にしてテストを受けさせ、良い点数を取らせたという事件がありました。
不正でいけない事ですが、皮肉な事にその生徒さんは、その次からそんな事をしないでも以前より良い点数が取れるようになってしまいました。
とにかく「自信」をつけるというのは、とんでもないパワーを発揮すると言いたいのです。
「やる気」を支えてくれます。
状況は様々なので、それぞれに合ったやり方があると思いますが、この
自信→やる気
という事だけは、常に忘れないようにすることをオススメします!
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